素晴らしき放浪者の戯言

100年に1度の世界の大転換、50年に1度の日本の政権交代を見届けるブログです。 政治、経済、メディア、都市、映画etcの各分野を放浪しつつ 時たま核心に迫ります。

映画 「 シュガーマン 」 

   



   久しぶりに映画館をハシゴした。
   少しは期待していた映画が何ともお寒い出来で、このまま帰るのは寂しすぎると思い、新
  宿を彷徨っていると、シネマカリテで「シュガーマン 奇跡に愛された男」がかかっているで
  はないか。
   さっそくチケットを買い劇場に入ると、レオス・カラックスの新作「ホーリーモーターズ」も
  上映されていた。
   アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞に輝く「シュガーマン」はこんな梗概です。

                           (以下、軽くネタバレを含みます。)

   1960年代後期、デビューしたシンガーソングライター、ロドリゲスはボブ・ディランと比較
  され、将来を嘱望されていた。しかし、二枚のアルバムは全く売れず、彼は消息を絶つ。
   その数年後、ロドリゲスの音楽は突然南アフリカで大反響を呼び、エルビス・プレスリー
  をも凌ぐ有名ミュージシャンとして、アルバムは爆発的セールスを記録する。90年代に入
  り南アフリカの熱狂的ファンがすでに死亡したと言われるロドリゲスが巡った運命を探る
  べく調査を始めるが・・・。

   映画が始まってから私は画面にくぎ付けになった。
   いや、正確には劇場に響き渡る音に耳をそばだてていた。
   まさに伝説のシンガーソングライラーに関するドキュメンタリーなのだから、彼の歌が
  幾度となく流れるのだが、先ほどのシネコンの音響とは決定的に違うのだ。
   シネコンの音響はカーステレオの極大バージョンの音、シネカリテの音ははオーディオ
  の音。両者は決定的に違うのだ。シネコンの音は倍音があまり響いていないように思
  える。もちろん、しみじみ「いいな~」と思えるのはこの小屋や渋谷のイメージフォーラム
  の音だ。(以前、イメージフォーラムでボブ・ディランのドキュメンタリーを観た時もそう感
  じた。)ミュージシャンのドキュメンタリーでやはり音は重要です。

   一言でいうと、本作は「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」に通じる骨格を持つ映画
  なのだが、ロドリゲスには「ブエナ・ビスタ」に出てくるあの爺さんたちのようなけれん
  たっぷりのいやらしさは微塵もない。
  (もちろん、あの爺さんたちの色気はそれはそれでいいのだが)

   南アフリカのコンサートでロドリゲスが熱狂的に迎えられるシーンで私は何ともベタな
  ことに泣いてしまった。「ブエナビスタ」の同様のシーンでは涼しい顔でやり過ごしたの
  に・・・。この差は一体何なのだ。
   ミュージシャンとして全く売れなかったと言うが、実はづぶされてしまったのだと思う。
   ボブ・ディランをさらに甘くしたような彼の歌声は実に魅力的だもの。

   その後、消息不明となったロドリゲスは肉体労働で生計を立てながら市長選に立候補し
  たりした。ワーキングクラスなのにこの人にはどこか心の余裕があって品がある。
   宮沢賢治の「雨ニモ負ケズ」に通じる人物だと思う。困難、苦難で恨みつらみがあって
  もおかしくないのに「いつも静かに笑っている」のだから。
   音楽的には違っても生活は「ブルース」であるにも拘わらず高邁な人物であるからこ
  そ、私は南アフリカでロドリゲスが大スターとして向かえられたシーンに落涙したのだと
  思う。

   黒澤明「生きる」のレザーディスク版に寄せた宮崎駿の解説がふと思い出された。
   (記憶だけをたよりに採録すると)

   「市役所の役人が書類の束をどっこいしょと積み重ねると、私(宮崎駿)が
    出来あがったフィルムの缶を積み重ねるとどれほどの違いがあると言うのだ」

   いや~、だいぶ違うんじゃないですか!宮崎さん!
   とその昔は思ったものだが、案外、彼曰くのようにさしたる違いはないのかもしれない。
   私は当ブログを連ねならがフト思う。
   「これに一体何の意味があるのだ」と。
   私が画面を一行埋めてまた一行と積み重ねていくのとロドリゲスが肉体労働でレンガを
  積み上げるのと比べたらどうだろう。
   やはりレンガを積み上げた方が価値があるだろう。
   (彼にしてみればレンガを積み上げるよりステージで歌いたいのだろうが。)
   
   本作の副題は「奇跡に愛された男」となっているが、奇跡は何もしないと起きない。
   全然、関係ないようでもレンガを積み上げ続けているからこそ起こるのだ。

   「果てしない行軍」を続けていると思っているあなた、結果出した、成果上げたはずなの
  に何も変わらないと思っているあなた。

   そんな人達に映画「シュガーマン」をお勧めします。
  
  
シュガーマン
さっそくオリジナルサウンドトラックも購入。







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