素晴らしき放浪者の戯言

100年に1度の世界の大転換、50年に1度の日本の政権交代を見届けるブログです。 政治、経済、メディア、都市、映画etcの各分野を放浪しつつ 時たま核心に迫ります。

答え合わせ 「 半島を出よ 」 VOL.1

   



   村上 龍のこの小説は新刊当時(2005年)、話題になったのだが、読まずじまいだった。
   理由は北朝鮮が攻めてくるはずないと思っていたこと、及び当時はどうも朝鮮半島に興味
  がなかったからだ。今や日本にとって朝鮮半島の外交上、地政学的重要性は十分に認識
  している。
   でも、読み進めていくうえで「高麗遠征軍」(コリョ)の個々の人物背景はやはりどうもあ
  まり興味がなかった。作者村上 龍は「脱北者」にインタビューして人物描写の参考にしてい
  るようだが、私は彼らにそれほどの思い入れはない。

   さて、この小説の主な舞台は2011年の日本であり既に過ぎてしまった。
   でも、通貨戦争を巡る動きが2~3年遅れていることから、2013~2014年と設定し
  直して現実と照らし合わせ、「答え合わせ」してみることにした。
   
   この小説の肝は日本国債が暴落し激しいインフレと不況が襲う経済的窮地に陥った時、
  米国はどういう態度をとるかということだ。
   村上氏も述べているように親米(従米)が当たり前になっているが、日本が反米、いや極端
  な反米にふれた時、どうなるのかが小説のバックボーンだといる。
   
    「確か2007年の春だったが、総理大臣と財務大臣がテレビの前でペコペコと
     頭を下げながら、これは日本を救うためです、と涙ながらに演説して、その日
     からすべてのATMが停止した。預金や貯金が自由に下ろせなくなった。独り
     者はいくら、夫婦で子供が一人だったらいくらと、必要最低限の生活費が決め
     られて、引き出しが制限された。次に法律が変わって円をドルやユーロと自由
     に交換できなくなった。ドルやユーロで貯金していた人も、結局宝の持ち腐れ
     になってしまった。預貯金の引き出しが制限されている間に、消費税がだんだ
     んと上がって、最終的には17.5パーセントになった。税金を上げないと円
     は紙切れになってしまって、日本は破産してしまい、外国人に会社や土地を
     買い占められてしまい、日本は日本でなくなってしまうのです、と財務大臣と
     総理大臣は涙ながらに説明した。そのあとインフレが始まって、結局国民の
     金の四十パーセントほどを国がいただく計算となった。」 
  
                ~ 村上 龍 著 「半島を出よ」上巻 p20 ~


   日本は米国債を売ることも罷りならず、米国は中国に武器を売り、北朝鮮と緊張緩和して
  手のひらを返す。

     日本人は、政治家もマスコミも大衆も急にアメリカのことを嫌いになった。
           
                ~ 同書 p21 ~
 

   「預金封鎖」については何度もふれられる。

     預金封鎖という禁じ手は確かに財政を救ったが、―― p61

     財政破綻寸前の預金封鎖と外国為替普及及び外国貿易法、いわゆる外為法
     の改正による海外資産凍結 ―― p179

     政府は預金封鎖を行なう際にメディア規制した。 ―― p331



   この小説には描かれなかった事態、日銀の「異次元の金融緩和」が行われたのだから、
  周知のように国債暴落の可能性は本作新刊時、2005年より格段に上がっている。
   さらに「相棒 XDAY」で預金封鎖のテストたるシステム障害を装った引き出し制限
  もプロパガンダされているのだから、いよいよ「その秋(とき)」は近い。
    
   世界1、2位を争うくらい親米日本が反米になるなんて信じられない人が多いだろう。
   事の是非はともかく、その昔は反米左翼が確固として存在していたのだ。
   
    「時代なんか、パッと変わる!」


   契機となるのは、やはり経済的要因だろう。

     「失業者は五百万人を超え、全国で数十万人がホームレスになった。
      そういった状況で、ドルの暴落で大損させられた上に、勝手に北朝鮮と不可侵
      条約の予備交渉に入ったアメリカへの国民的反発が強くなった。」
   
                             ~ p280 ~


   何度も繰り返すが、やはり「必要悪」しかないということですな。

   その前前段階としての「ジャパンパッシング」ぶりもしっかり描かれている。
   
     「東アジアを訪問した大統領が北京で二泊、ソウルで一泊したのに、
      東京滞在はわずか二時間ということもあった。」―― p180   


   安倍首相、訪米の際の米国の冷遇、習 近平とオバマの親密ぶり、朴大統領への対応
  は、この描写とぴたり符合する。
   「ジャパンパッシング」はさらに加速し、日米関係の根幹をも揺るがす。
  
     「アメリカは日米安保条約の解消を何度も匂わせ、中国への武器禁輸措置を
      緩和し続け、外貨準備高を減らした日本に対して飼料穀物の一方的な大幅
      値上げを通告した」―― p180


   終戦記念日あたりに、テレ朝「玉川総研」で小沢一郎氏他何人かが、「戦後は終わって
  いない」と語っていたが、「戦後」そのものと言っていい日米安保もイザとなったら、
  案外モロいものなのかもしれない。 (つづく)









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