素晴らしき放浪者の戯言

100年に1度の世界の大転換、50年に1度の日本の政権交代を見届けるブログです。 政治、経済、メディア、都市、映画etcの各分野を放浪しつつ 時たま核心に迫ります。

「試論 『 相米ごっこ 』 」についてのスケッチ 前編

   



   パーティーと呼ぶには小じんまりとしたある集いでのことでした。
   私はある若手映画監督と映画談議していた。
   「それで日本映画では誰が好きなの?」と私とたずねると、若手監督は「ソウマイです」と
  答える。「ソウマイ?相米慎二のこと?」と聞き返す私。「ええ、そうです。いっすよ、相米。
  好きですね~」と返す。
   
   相米慎二 ―― 忘却の彼方へ行ってしまった固有名詞だ。
   中座しなければならなかったことから名前も年齢も聞かずじまいでだっだが、そんなに若
  くないのかなと思いつつも、「先輩が満島ひかりと結婚しました」とか言っていたな~。
   満島ひかりのダンナは映画監督・石井裕也(30歳)、すうすると彼は20代だね。
   30代は相米慎二を知らないだろうし、興味もないのだろうと勝手に思っていたが、20
  代はどうも事情が違うのかしらんと思いつつそのままやり過ごした。
   今日、若い衆が見るような映画とは相米はもっとも遠い存在のように思えるがそうでも
  ないんだね。
   2011年、東京フィルメックスで没後10年の相米回顧上映が行われ、昨年も渋谷で
  相米特集やっていたような・・・。
   どうも20代以下は相米ファンが結構いるという結論に至ると同時に20数年前のある
  映画評論家の言葉が脳裏によみがえる。

   「20世紀、小津、溝口が日本映画界に君臨したように北野、相米が21世紀
    日本映画界に君臨するかもしれない。」

   相米さんは死んでしまったから君臨できないけど「伝説」になりつつあるね。 
   そんなこと思っていたら、昨晩深夜、日本映画専門チャンネルで相米監督の「ラブホテル」
  (1985年)をやっていた。確か主演の寺田 農の舞台挨拶を観たので初日か数日後に
  観ていると思う。当時、相米は「僕は小児科(少年、少女の映画)と思われているけど、
  婦人科(成人映画)もいけるんだ」とか語っていた。
   古巣、にっかつで撮った相米唯一の日活ロマンポルノだ。
   当時はR18指定だが、ケーブルTVではR15指定であることからわかるようにロマン
  ポルノしてはちっともエロくない。

 
              相米 ラブホテル


   途中からだったことから、また別の機会に「最初から」とも思ったのだが、やはり見入って
  しまった。

   主人公・村木(寺田 農)と名美(速水典子)の埠頭の突端でのシーン。
   名美が「いっしょに落としたピアス探して」とか村木に言うのだが、速水のセリフのキーの
  高さ、共演者との距離感、身振り振る舞い、別に当時の薬師丸ひろ子がやっても何の違和
  感もないことに気づかされる。映画全体としては薬師丸じゃ違和感あり過ぎなのだが、
  あのシーンに限っては、薬師丸が相米とのコンビでどこかで演じたシーンの焼き直しのよう
  な気がする。
   つまり、アイドルだろうとロマンポルノの女優だとそんなことは関係なく相米が完全にコント
  ロールしているわけです。
   ななめの俯瞰でスティデイーカムではなく適度に揺れながら、埠頭の突端の二人にゆっく
  りとよっていくクレーン撮影の長回しはわかってはいても「やっぱりいいな、これが映画だ」と
  つぶやくしかない。

   このシーンで本作の重要な楽曲、山口百恵「夜へ」が入ったLP「A Face in a Vision」を
  村木が名美に渡す。せっかくですからちょっと聞いてみましょう。

   

   このアルバム「A Face in a Vision」は「NHK特集『山口百恵 激写/篠山紀信』」の
  サントラ盤です。テレビなのに篠山紀信がすべてスティール(静止画)で構成したユニーク
  な番組でした。やはり、百恵ちゃんは凄いよというしかありません。
   撮影当時19~20歳ですから。

   相米の艶技指導がいまいちでも、この曲ともんたよしのり「赤いアンブレラ」でエロトーンは
  もう決まりというもんです。
   かつて故・森田芳光監督が「相米さんは音(音楽)演出では世界で3本か5本の指に入る」
  とか言って絶賛していた。
   本作でも、男女でもめているシーンで低く流れているのは童謡「かわいい魚屋さん」であり
  ます。(記憶がチト曖昧だが、童謡だったことは間違いない)
   北野 武の処女作「その男凶暴につき」でカーステレオから流れているのが古今亭志ん生
  の「黄金餅」だったことに通じるシュールさだ。
   映画の音(音楽演出)のいわゆる「対位法」というと黒沢 明とスタンリー・キューブリックが
  有名だが(武満 徹はこれを否定しているがややこしくなるのでそういうことにしておき
  ます)、相米の場合、また別の異化作用をもたらす。
   
   トレードマークの長回しとこの異化作用でいけば、もっと早く世界的に評価されたでしょう
  に相米は別のことに熱中してしまうのですよ(笑い)。

                            (つづく)









  
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