素晴らしき放浪者の戯言

100年に1度の世界の大転換、50年に1度の日本の政権交代を見届けるブログです。 政治、経済、メディア、都市、映画etcの各分野を放浪しつつ 時たま核心に迫ります。

「 氷の世界 40年 」 を観て 後編


   
   何でも時代と結びつけるのはどうかと思うが、「氷の世界」の1曲目、「あかずの踏切」につ
  いて中沢新一氏が「当時のフォークソングというものは、どこへ行くのかについて示していた
  が、留まっている時代だと歌ったのはこの曲だけだ」と述べていた。
   「氷の世界」でこの曲は2番目か3番目に好きな曲だが、実はスティービー・ワンダーの
  「Superstition」に影響されて生まれた曲だと40年経ってはじめて知った。
   この曲どこかファンキーだからね。
   ファンキーといえばシングル「氷の世界」だって、ビートはファンキーだ。
   歌詞はご存知のように個人の内的世界へどんどん入り込んでいくのだが、バックコーラス
  にわざわざ黒人女性を入れたように実に黒くてファンキー。
   この点、誰か指摘しないのかと思っていたら、スガシカオさんが「ビートは黒いですよね」
  とかいっていた。それだけじゃまだ足らないのでしょ。
   こんな個人の内的世界を歌う歌詞にこれほどファンキービートをのせた楽曲は40年経っ
  ても陽水以外誰もやっていないんじゃないかな。
   五木寛之氏は「陽水さんは言葉に強烈に撚(よ)りをかけている」と評していたが、撚りが
  かかっている、ねじれているのは歌詞だけじゃない。
   「氷の世界」では歌詞とビートが大きく撚りをかけたようにねじれている。
   だからこの楽曲は台風のように渦巻いている。80年代チックいえば「強度」の塊のような
  曲だ。このねじれ具合は映画における対位法みたいに思える。陽水が「氷の世界」でブルー
  スハープ吹いてる様は黒澤明「羅生門」の三船敏郎のセリフ、狂言の様式を取り入れた哄
  笑を思い起こさせる。あれも一種の対位法でしょう。


       氷の世 界
       100週以上ベストテンにとどまり、2年かけて100万枚突破。
       なんかピンクフロイドのような売れ方だね。
       楽曲提供は小椋 桂、忌野清志郎。参加ミュージシャンは細野晴臣、  
       村上秀一、林 立夫、高中正義、深町 純 等々。ロンドンレコーデング
       ではストーンズのアレンジャー、ニック・ハリソンも参加。
       日本人スタッフは全員20代。       
 

   シングル「氷の世界」は有名過ぎるくらい有名だが、実は「氷の世界 PartⅡ」と言っても
  いいより進化・深化した楽曲をご存知だろうか?「あやしい夜をまって」(1981年)に
  収録されている「My House」がこれに当たると思います。
   懐疑の視線は音楽業界そのもの、自身の歌にも向けられ歌詞のシュールさとパンクさ加
  減は「ここに極まれり」となっています。発売当時、「こんなこと歌ちゃっていいんですか?」
  と小室等氏が心配ぎみに陽水に訊いていた。
   当時から私はこのシュールさとパンクさと買っていて、親友らに話したのだが、みんな
  「???」という反応だった。
   今から10数年前、この曲の歌詞をメインにフィーチャーした映像作品がTVの陽水特集で
  流されたが、リミックスされた音楽のようで不思議とミレニアム前後の時代の空気とマッチし
  ていた。
   やっぱり、陽水は数年から数十年先を行っているのだ。   

       あやしい夜を待って
        この当時、日本のミュージックシーンの中心はユーミン、サザン。
        「陽水?いたね」くらいの感じ。でも、この時私は陽水に「再会」し、
        来るべき80年代の新たなる陽水の胎動を感じていた。 


   「氷の世界」に戻ると、「誰か傷つけたいな」という歌詞を取り上げて伊集院静さんがこれ
  は今では普通になっていますよねとコメントしていた。ネット上にどれほどの罵詈雑言があ
  ふれているか、現実世界でも一部の人ではあるがヘイトスピーチが確固として存在している
  ことに鑑みるに正鵠を射ている。
 
   宇宙飛行士・土井隆雄さんは宇宙で聞く音楽として陽水の「氷の世界」を持っていった。
   宇宙の漆黒の闇の中で行く「氷の世界」はどんなもんだったろう。それとも「帰れない二
  人」や「チエちゃん」あたりのほんわかした曲を聞いたのだろうか?
   
   「そのやさしさを秘かに 胸にいだいている人はいつかノーベル賞でも
    もらうつもりでガンバってるんじゃないのか」 

   土井さんはノーベル賞はとらなかったが宇宙飛行士になった。
   70年代は「そのやさしさ」と「ノーベル賞」は両立しただろうと思う。
   今やどちらか一つで両方は相当に困難なのだと考えます。
   ここで「ノーベル賞」とは社長、部長、医者、弁護士、MBA取得なんでもいいんです、
  ある種の上昇指向、出世のことです。
   「ノーベル賞もらう人」(上昇指向の強い人)は野の花のように自生する「そのやさしさ」
  を農薬まいて少しずつ少しずつ殺しているのだと思います。
   そんなことはない?でも約半世紀生きてきて私の身の回りをみると、そう結論づけられ
  ます。
   土井さんは宇宙飛行士になるうえで大変な労力を払われたと思いますが、農薬をまくこと  
  なく「そのやしさ」を身にまとったまま宇宙飛行士になったのだと思います。
   本当に素晴らしい人だとつくづく思います。

   語りだすときりがないことからこれくらいにしますが、シングル「氷の世界」についていろん
  な人が様々なことを言います。どう受け止めるかは各人各様ですが、一言でいうと「過激」だ
  ということだと思います。
   ちょうど「過激」について思いを巡らしいたところでした。
   これについて来年にしましょう。

   圧倒的訴求力のある歌唱力と美声、純粋さ、優しさ、激しさ、抒情、甘美、シュール、
  パンク、先進性、様式美、そして日本人男性特有の含羞、これらすべてを併せ持った
  井上陽水。

   やっぱり、私は陽水が大好きです。

                     (了)
   

  
   どの曲にしようかと迷いましたが、政治ブログらしくこれにしました。
   ウワサをすればなんとやら、サウンドはピンクフロイドチックだね。
   当ブログは年内もう1本いきます。







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