素晴らしき放浪者の戯言

100年に1度の世界の大転換、50年に1度の日本の政権交代を見届けるブログです。 政治、経済、メディア、都市、映画etcの各分野を放浪しつつ 時たま核心に迫ります。

その先の「町づくり」へ VOL.8

   



   さて、本論に戻ると、以前、「潜在需要は共感、いやしとして現れる」と述べた。
   逆にいうと、「共感」や「いやし」が数字(売上、リピーター率)になれば潜在需要が具現化
  されたといえるだろう。
   潜在需要の具現化は何かを「つくること」によって実現する。
   人々が何に共感し、いやされるかは千差万別です。
   温泉、リゾート、マッサージ、カラオケボックス、ダンススタジオ、いやゲームセンター、パ
  ンチンコだって無いとはいえない。
   いずれにせよ、何らかのカタチを「つくること」によって潜在需要は具現化される。
   そう考えるのが当然だろう。でも、町づくりは不動産であり、変わらないようで5年、10年、
  数10年単位で変わっていく。10年先まで持続可能な潜在需要を探るのは容易なことでは
  ありません。そうだとするなら「つくらないこと」で将来の潜在需要の余地を残しておくことも
  重要であろう。

   長谷川氏が設計した星野リゾートを引き合いに出して山崎氏は語る。

    山崎  星野リゾートと長谷川さんの仕事は、ランドスケープデザインの理想的な
         モデルだと思います。お客さんに愛される場所を少しづつつくるのであれ
         ば、最初は小さな場をつくり、その結果を見ながら方向性を微修正しつつ
         次の場をつくることができる。場の経験を蓄積させながらデザインするこ
         とができますよね。人の動きや植物の成長を観察しながら少しずつ空間の
         価値を最大化させていくデザインというのは、ランドスケープデザインの       
         本質的なアプローチの一つだと思います。

          ~ 長谷川浩己 山崎亮 編著 「つくること、つくらないこと」~


   さらに土建工学の金科玉条「容積率至上主義」についてもふれている。


    山崎  もう一つ、僕の仕事と似ているなあ、と思ったのが、空間の使い方と利益に
         ついて。僕の関わった鹿児島の「マルヤガーデンズ」の場合、各フロアの
         全部をテナントで埋めないで、一部にテナントの入らないの入らない“ 穴
         (ガーデン) ”をつくり、その穴をコミュティーの活動場所にすることで、
         商品を買う人以外の人たちがマルヤガーデンズに来るようになるという仕
         組みをつくりました。それは、さきほど見学したハルニレテラスの建物の
         容積を低くしていることと似ています。
         容積率をめいっぱい使うことばかりが価値を生み出し儲けにつながるので
         はなく、あえて減らすことで空間とボリュームのバランスが保たれ心地よい
         空間が生まれるのであれば、それが価値を最大化することになる。反対に、
         せっかくの容積率だからすべてを使い切ろうとしすぎることで、空間全体の
         価値を低めている事例を目にすることが多い。


                  (中略)


         小さな面積の事業であれば、まずは容積率いっぱいに計画して数年で利益
         を最大化させる必要があるかもしれないけど、大きな面積を持っている事
         業であれば、広さとその場の資源を活かしながらロングスパンで利益を上
         げるように考えることができるでしょうね。
         時間をかけて面積に対する価値を増幅していく計画は、人口減少や経済停
         滞など先行きが不透明な21世紀における事業プランの一つのモデルだと
         言えるでしょう。(後略)

                           ~ 引用 同上 ~
 

   高度成長時代、人口増加時代に基づく増床、スクラップアンドビルドはいよいよ終わりを告
  げようとしている。山崎氏が携わった姫路市家島の町づくりに関連して長谷川氏は言う。
         
         
    長谷川 山崎さんが話すように、確かに時代は変化していて、定かではないですが、
         聞いた話ではイタリアの建築デザインの仕事は修復で、新しいデザインを
         生み出すチャンスは2割だとか。日本もある意味このような状態になりつ
         つあるのでしょう。

                           ~ 引用 同上 ~

   
   
   これに関して身近なところで私はある老建築家の指摘を思い出す。
   「日本は古くなると建物の価値は減っていくものとされていますが、西欧では古い建物ほ
  ど価値が上がるのは当たり前なんです。どうしたことでしょう。」と言う指摘を。

   「つくらないこと」は潜在需要の留保であります。
   敢えて「つくらない」ことで潜在需要を残すことは、先日の復興住宅についてのNHKの番
  組の結論の一つとも一致します。
   もう少し見方を変えるなら、今まではつくりあげた空間を埋めていくことに主眼が向けられ
  ていましたが、それは需要を見切れるという確信に基づくものだったのです。
   でも、今や町づくりは「空間」のみならず「時間」についても本気で考えないといけないの
  です。日本史上例を見ないペースでの人口減少時代、先行きが不透明な時代、持続可能
  な需要をピタリと探りあてることは困難になりつつあるのです。
   時間と共に変わっていく潜在需要がいよいよ顕著になっていくなら、敢えて「つくらない」
  ことが未来の潜在需要の実現につながることがあるのです。



                つくること つくらないこと
                 平易な言葉で書かれたコンパクト
                 な本であるが、実に多くの示唆に
                 富んでいる。興味ある方は一読を
                 オススメします。



   一方、持続可能な需要に基づき「つくられたもの」も当然、存在します。
   正確にいえば、結果として長期間生き残っただけでありますが。
   京都の町並み、老舗、名所・旧跡等々、これらは人工的、自然的の違いはありますが、
  ロングライフデザインいえるでしょう。
   長谷川、山崎の両氏はデザイナー・ナガオカケンメイ氏にロングライフデザインにつ
  いて問うている。 


    長谷川 ロングライフデザインはナガオカさんが狙ってきたものですか?

    ナガオカ いい、たまたまです。デザイン業界では、良いデザインだからとか柳 宗理
         さんがつくったから残ったとか言う。でも、デザインは「生態系」の中にあるん
         ですね、良いデザインというだけでモノが生き残るるわけではない。
         ほかの諸条件の中で成立しているのです。

             (中略)

         その時、ヴィツゥ社の社長さんが来日して、デザインの進化と動物の進化は
         一緒だという話をしてくれた。「魚の尾ひれが伸びたりするのは、環境上そ
         うせざるを得なかったから。デザインもそうあるべきだ。デザインも環境に
         合わせてちょっとずつ進化をしなければいけないのに、一気に進化しなけば
         ならないものに位置付けられてしまった。」と。
         こうしてデザインの生態系について考えると、ランドスケープの、自然や日常
         的な環境に対する考え方と一緒のようですね。

                            ~ 引用 同上 ~

                       
   因みにナガオカ氏はロングライフデザインの生み出す条件として次の10ヶ条を挙げて
  いる。これは町づくり、不動産にも援用できそうであります。
         
    〔ロングライフデザインを生み出す10ヶ条〕

      1 修理    修理して使い続けられる体制や方法があること

      2 価格    作り手の継続していく経済状態を生み続ける適性な価格であること。

      3 販売    売り場に作り手の思いを伝える強い意志があること。

      4 作る    作り手に「ものづくり」への愛があること。

      5 機能    使いやすいこと。機能的であること。
    
      6 安全    危険な要素がないこと。安全であること。

      7 計画生産  あくまで計画された生産数であること。予測が出来ていること。

      8 使い手   使う側が、その商品にまつわる商品以外に関心が継続する仕組みが
              あること。

      9 環境    いつの時代の環境にも配慮があること。

      10 デザイン 美しいこと。



   必要に応じて生態系のように少しづつ変わることは「つくること」を抑制し、時間の経過と  
  共に不易流行のごとく変わっていくことであります。
   長谷川氏はロングライフデザインは残るべくして残るのであって、それは風景に似ている
  と結論づけている。町づくりの観点から逆さ眼鏡で見るなら、風景として地域に馴染んでいくロ
  ンライフデザインを設計できるかどうかということです。書割のような街並みではなく「風景」
  に成り得るものをつくれるかどうかが町づくりの肝であります。
   シドニーの人々はあのオペラハウスが好きで好きでたまらないのだそうだ。
   このように地域住民に心底愛されるものはロングデザインであり、やがて「風景」となるの
  であります。

   「つくること、つくらないこと」――― デザインとデザイン否定の極北、本書はこの両者の
  斥力にデザインの本質をみている。

   町づくりもこの本質に根ざして、そろそろ「その先の『 町づくり 』」へ歩み出す頃だと
  思う。
              (了)        
   


    そんじょそこいら 商店街
    「地域再生の罠」でも取り上げられている、「昭和の町」豊後高田市。
    大分発地域ドラマとして昨日放送された。(再放送は未定だそうです。) 
    「昭和の町」豊後高田のHPはこちら。









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