素晴らしき放浪者の戯言

100年に1度の世界の大転換、50年に1度の日本の政権交代を見届けるブログです。 政治、経済、メディア、都市、映画etcの各分野を放浪しつつ 時たま核心に迫ります。

すみだストリートジャズフェステイバル 2日目 補輯

    



     テヘヘヘ・・・・・・とまずはいいわけから。
     この記事は「2日目(後編)」として書かれるはずだったのですが、途中で全く構成が変
    わってしまい、「本編」であるはずのこの記事が「補輯」となってしました。そういうわけで
    これは「補輯」というより「2日目(後編)」のリローデッド(別バージョン)とお考えください。
     
     そうは言っても「補輯」というより我々にとっての「架空(幻)のすみだストリートジャズ
    フェステイバル」 から入ります。「架空(幻)」とは何かというと、我々が見なかった、聞
    かなかったステージのことです。
     その中の一つに菊地成孔の「菊地成孔presents HOT HOUSE」があります。
     このステージはビーバップ&キューバップで踊ろうという企画です。
     スイングジャズの頃、ジャズはダンスのための音楽だったことは我々でも漠然と知って
    います。ナルちゃん(菊地成孔)によれば、もっと古くラグタイムの頃、ボールルームで踊
    られていた「アニマルダンス」からアメリカポピュラーミュージックとダンスは切ってもきれ  
    ない関係でした。
     ラグタイム ⇒ ニューオリンズジャズ ⇒ スイングジャズ ⇒ ベニーグッドマン、カウトン
    ベーシーとアメリカポピュラーミュージックはダンスと共に歩んできました。
     ビーバップ、すなわちモダンジャズから踊れない音楽となってしまったのです。
     当時でも「バップで踊ろう」という企画はあったようですが、頓挫してしまったようです。
     かくしてモダンジャズは座って聞くか、立っていても踊らずに聞く音楽として定着した。
     特に日本においてはジャズ喫茶文化がこれに拍車をかける事態となったとナルちゃん
    は主張します。さらにジャズ喫茶とディスコ文化は相いれないと結論づけるあたりは、
    中学生の時、先輩宅で連日、「現代音楽」の薫陶をうけ、それなりにはまったにもかか
    わらず、130Rのようなターンで現代音楽 ⇒ ディスコへと変容したナルちゃんの面目
    躍如といったところでしょうか。
     かつて頓挫したバップで踊ろうという企画を現代に蘇らせたのが、「菊地成孔presents
     HOT HOUSE」のステージだと思います。

     さて、「架空(幻)」から我々の「すみだストリートジャズフェステイバル」に戻るには、
    我々はさらに時間軸を遡らなくてはなりません。
     盆踊りは平安時代の念仏踊りを起源として鎌倉時代、新機軸が次々生み出され、
    江戸時代初期に絶頂を向かえたといいます。その時代、すなわち中世から近世の
    西欧のダンスはどんな特徴を持っていたのでしょう。
     2004年11月4日、東京大学で行われたナルちゃんの講義での板書を再現して
    みましょう。

      A 舞台の上に踊り手の軌跡が決められており、その進路を辿る。技巧の
        中心は足のポジションとステップ(クラシック・バレエのポジションの原型
        が既に見られる)

      B 腕および手のフィギュアは下半身より重要視されない。

      C ほぼ全てがカップルによるダンス。舞踏会の幕開けは国王と王妃による
        ダンス。

      D 言葉は3拍子系(メヌエットなど)と二泊子系(ガボットなど)に分かれる。  

        ~ 菊地成孔 大谷能生 著 「東京大学のアルバート・アイラー」
                            東大ジャズ講義録・キーワード編 ~



     これが西欧の中世から近制におけるダンスの特徴だそうです。
     特にBとCが重要でカップルで踊るのだから相手の手を握るとか、体を抱きよせること
    から手は大きな役割を担わず、下半身がダンスの主役になります。
     西欧の踊りは下半身が重要だと指摘しています。
     (近代になり手の表現が加味されたことも付言しているが、ここは大づかみで割愛
      します。)

     下半身の動きがメインの西欧の踊りに対して日本を含むアラビア、アジア、オセアニ
    アは上半身の動きがメインになるとナルちゃんは説きます。
     これらの国々の場合、西欧とは違い、共同体が一同に会して車座になり下半身は動
    かすことはなく上半身だけが動きます。手でリズムをとりながら上半身が動くのです。
     その代表例としてバリ島のケチャが取り上げられています。
     全員車座になり手と口でリズムをとっている。

     ケチャ


     日本の場合、盆踊りや阿波踊りが伝統的な踊りです。
     盆踊りは念仏踊りが起源ですから手を合わせるとか手の動きから始まったのでしょう
    か?車座にはなりませんが、盆踊りは円陣を組み全員で同じ動きをします。
     同じ動きというと阿波踊りはより徹底しているように思います。
     阿波踊りは腰の動きも重要ですが、どちかというと手の動きが主導で西欧のステップと
    は全然違い反復的な腰の動きがくり返されます。

     阿波踊り

     

     現代でも手の動きがメインの踊りがあるわけで「パラパラ」がこれにあたるとナルちゃん
    は指摘します。「パラパラ」はディスコの流れを汲んでいてまだステップがあると思うので
    すが、「オタ芸」になると、先祖返りしたのか足の動きはもっと従属的になりまさしく上半
    身の踊りです。

    オタ芸
                  「今イチ、常識ない中年なんですが・・・」さんから拝借


     さて、ここで2日目(前編)でジャズの定番「モーニン」に合わせて踊っていたグループ
    がいたことを思い出してください。
     彼らがナルちゃんの意図を汲んだグループかどうか定かではありませんが、
    「全員一糸乱れずにシンクロした上半身を主体としたゆっくりとした動きの踊り」でした。
     やっぱり、一見、新しい踊りのようですが、「オタ芸」ばかりか「モーニン」ダンサーもあく
    まで日本の伝統に根ざした上半身の踊りの呪縛から逃れられないのかもしれない。
     (もっともすみだ産業会館ではビバップ、キューバップに合わせてステップ(下半身)中
      心で踊っていたのかもしれませんし、ヒップホップを普通に踊っている小中学生が大
      人になったら事態は変わるのかもしれない。)

     大友さんとナルちゃんはジョイントしたりコラボしたりして旧知の間柄です。
      (GROUND ZERO、DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN等)

     「ナルちゃんがビバップで踊ろうなら、俺はジャズ祭で盆踊りだ」

     そんなこと考えていなかったでしょうが、ナルちゃんがあくまで都市生活者の音楽な
    ら、大友さんはもっとアーシー(土俗的)な世界にコネクトする音楽なのだと私は考え
    ます。
     だからこそ、大友さんは日本人は結局、手の踊り、みんな同じ動きをする踊り、盆踊り
    になるのだくらいは明確に意識していただろう。

     「ビバップでダンス」と「ジャズ祭で盆踊り」、これは二人の音楽世界の対比であるのと
    同時に二人とも音楽の一つの極地、祝祭としての音楽をより強く指向していることの表
    れであると思います。
                     
                          (了)



東京大学のアルバートアイラー
菊地成孔と大谷能生による東大でのジャズ講義録。
あれから10年。(御両人以外では)教養課程でこれ
ほどの密度の講義はいまだないと思う。
00年代の「伝説」として将来語りつがれるだろう。
   
      





スポンサーサイト

観光・レジャー | コメント:0 |
<<VHSとベータ、WindowsとTron、iPS細胞とSTAP細胞 | ホーム | すみだストリートジャズフェステイバル 2日目(後編)>>

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

| ホーム |