素晴らしき放浪者の戯言

100年に1度の世界の大転換、50年に1度の日本の政権交代を見届けるブログです。 政治、経済、メディア、都市、映画etcの各分野を放浪しつつ 時たま核心に迫ります。

映画 「 リヴァイアサン 」




この映画はBBCでデイビッド・アッテンボローが製作した自然ドキュメンタリーやナショナル・ジ
オグラフックの映像とは大きく異なるのです。
普通の自然ドキュメンタリーは、どこまで行っても人間目線の人間中心の映像であるわけです。
人間を自然界の、動物の一つと捉えた「ニンゲンは犬に食われるほど自由だ」のコピーで有名
な藤原信也氏の写真集「メメント・モリ」 も人間が人間を客体化しているわけですが、この映
画に比べればまだ生ぬるいのです。なんとなれば見る主体としての人間が確かに存在してい
るのですから。

「リヴァイアサン」では自然(海)、機械、魚と人間が全く同値に扱われる。
(撮影対象としてのフィルムソシアリズム?)
技術的にこれが可能となったのはGoProという超小型カメラを船内、海中、人体の至るところ
に設置して撮影したからです。三脚を据えたり、クレーンにのせたり、スティディーカムつきの
手持ちカメラをしょったりしても今までのドキュメンタリーは人間がファインダーを覗いているが、
本作はファインダーは覗かずモニターしか見ていないのではないか。だから人間と海や機械
や魚が並列に置かれた映像が可能となるのです。 
日本人にはこんな映像は撮れないでしょう。
技術の問題ではなく、日本人は汎神論、アミニズムに近く機械でもアダ名をつけたりするくらい
ですから。
監督、ルーシァン・キャステーヌ・テイラー、ヴェレナ・パラヴェルの宗教についてはあずかり知
らないが一神教の世界に生きる人でないと本作は撮れないと思います。

ドキュメンタリーといいつつ人間中心の視点は「反=物語」を形作る。
例えば「漁民の苛酷な生活」という「物語」をドキュメンタリーの中に見出そうとしたり、その
「物語」からの逸脱した「反物語」こそドキュメンタリーだというスタンスです。
本作は漁師が出てくるが会話はなく黙々と作業するばかりで声すら発しない。
「言葉」が存在しないのです。(TVの音声が漏れてくる程度です。)
言葉が存在せず映像だけの映画は叙事詩、神話となったりしますが、本作では捌かれたの
ち海に棄てられるエイとこれを狙うカモメの視点などあちらこちらに散見しジャンクな映像だら
けで叙事詩にも神話にも成りえないのです。(映像としてのフィルム・ソシアリズム?これらは
GoProというカメラが可能としている。)





二人の監督がどこまで意識しているか定かではありませんが、映画、絵画の記憶の断片があ
ちらこちらに散りばめられている。海水に濡れた船中のワイヤー、クレーンはよだれを垂らした
エイリアンに見えるし、魚がバサバサさばかれる様はお魚さんにとっては「スプラッターム
ービー」、海上を群れ飛ぶカモメは誰がどう見ても黙示録的であるわけであり、水揚げされた魚
が波にちゃぷちゃぷとGoProカメラもろとも揺れる様は内臓感覚だ。
(初期クローネンバーグは恐怖の内臓感覚と呼ばれた。)

シュールリアリスムとか言いますが、人の視線で捉えた映像でもいかなる「物語」をも介在させ
ることなく世界を映し続けると既にシュールであったりします。人間の視線が放り出され、人間
たちも会話がないまま船上のいたるところで起こる些末な事柄をGoProで捉えた様はアーティス
ティックであるのと同時にシュールであったりします。
本作ではGoProが‟ 海中引き回しの刑 ”にさらされます。
GoProが海中、水面を行き来するシーンの海中の音、海を吹き渡る風、水しぶきは「音楽」で
す。いわば自然が奏でるノイズミュージックのようだ。
ゴダールが「映画史」で上半身裸でNAGRAのテープを「ウィーン、ウィーン」と反復して回転さ
せるあのシーンを思い出させる。あれはノイズミュージックというよりミュジーク・コンクレート
の一種といえるでしょう。
パンフのシリル・ネイラという映画評論家は本作を「高踏的なミュジーク・コンクレートのと大
衆向けのハードコア・パンクの中間あたりに位置する」と評しています。

終盤、海中、水面と‟ 引き回しの刑 ”にさらされるGoProが映し出す映像と音にCGなぞ一切
使わなくても今でも十分シュールな映像は可能だと再確認させられる。
宇宙ではなくて海中で「2001年 宇宙の旅」のスターゲートに匹敵するシーンが再現されたと
いったら言いすぎか?

何はともあれこの映画は「映画史」に残る1本となるだろう。
興味ある方は劇場へ。
東京は26日まで。




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