素晴らしき放浪者の戯言

100年に1度の世界の大転換、50年に1度の日本の政権交代を見届けるブログです。 政治、経済、メディア、都市、映画etcの各分野を放浪しつつ 時たま核心に迫ります。

昭和天皇のご意思 VS 反東京裁判史観 VOL.3

 




 〔大正から昭和へ〕

     第一次世界大戦終了後(1910年代後半)、ロシア、ドイツ、オーストラリア、トルコと君
    主制が崩壊し共和制へ移行していった。
     国内に目を転じれば大正天皇は御病気で何とも心もとなく、加えて普通選挙制を主張
    する大正デモクラシーが湧きがっていた。
     内外情勢を鑑みるに大正時代、日本は天皇制の危機、国体の危機にあった。
     権威を失った弱い天皇ではなく、明治大帝の遺産を継承したカリスマ的天皇を必要と
    していた。それは国民の望みであったのかもしれない。君が代斉唱が定着したのも、
    裕仁皇太子時代であります。
     大正天皇が崩御され元号が「昭和」となると、予定されていたように「明治ブーム」が
    起こったそうだ。昔は明治ブーム、今は昭和ブーム、似ていますな。
     今と似ているのはそれだけではない。
     橋川文三(注)が指摘する新しいナショナリズムも同様だ。      
     安田財閥当主を暗殺した朝日平吾の遺書というべき「死ノ叫声」を橋川は分析する。
     「死ノ叫声」とはこんな一文です。

       「一視同仁(差別をせず、すべての人が平等に見て仁愛を施すこと―引用者注) 
        ハ実ニ吾が神国ノ大精神タリ。サレド君制ノ奸(天皇の側にいるいかがわしい
        臣―同)陛下ノ御徳ヲ覆ヒ奉リ。自派権力ノ伸長ヲ計ル云々」

                          ~ 原 武史 著 「大正天皇」 ~


     橋川はこの事件を「国家と国民生活の一体性から疎外された不遇・無力な一日本人
    が、自己の生活の意味を究極的な統合シンボルとしての天皇との一体化に求めようと
    するラジカルな行動」と位置づけ、ここに新しいナショナリズムをみた。
     これは「『靖国』について」で指摘した現代の砂つぶのような個人に通じる。
     ラジカルな行動とは現代でいえばヘイトスピーチか。
     昭和の超国家主義のルーツがここにあると橋川は説く。
     超国家主義は昭和の軍国主義政治へとつながる。

       (注)・・・三島由紀夫をも論破した左翼の泰斗。猪瀬直樹の師匠でもある。

     だいぶ回り道したが、昭和天皇ご自身は「昭和」(戦前)と一体だったわけではないだ
    ろう。御立場上、そうせざるを得なかっただけで裕仁皇太子時代(人間天皇を指向)と
    戦前の昭和天皇時代(現人神)のアンビバレントの存在を内包していたと考える。
     昭和(戦前)では不敬とされた「天皇機関説」が大正時代は支配的であり、昭和天皇
    ご自身もこれをよしとされている。
   
       私は国家を人体に譬(たと)え、天皇は脳髄であり、機関と云ふ代わりに器官
       と云ふ文字を用ふれば我が国体との関係は少しも差支えないではないか。
        
                          ~ 昭和天皇独白録 ~
 

     人間天皇を指向した裕仁皇太子が奸漢どもに「現人神」に祭り上げられ「大正」は抹
    殺、強い明治よ再びと昭和は始まり戦争へと突入していく。
     この時、予言めいた西郷南州の思いが現実となる。

      それ(天皇)を戴く政府の「姦謀」が、ともに相寄って自ら国を亡ぼそうとしていると
      すれば、この一事だけはどうしても赦すことができない。

                   ~ 江藤 淳 著 「南州残影」 ( )内加筆  ~


     「大正」と「昭和」(戦前)でアンビバレントな思いを内包していただろう昭和天皇御自身
    が暴走する軍部をよく思っていたはずがないと考える。
     ブログ程度では書き尽くせぬ複雑な国際情勢を鑑みても、誰かが責任を取らなくては
    ならないという思いはおありだったのではないか?(もちろん、いわゆる「A級戦犯」だけ
    に責任があるとは思ないが)

      戦後の人間天皇宣言の萌芽が大正時代、裕仁皇太子時代にあったと知るとこの点
    がより明確になると思う。

                                         (つづく)

       





 
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