素晴らしき放浪者の戯言

100年に1度の世界の大転換、50年に1度の日本の政権交代を見届けるブログです。 政治、経済、メディア、都市、映画etcの各分野を放浪しつつ 時たま核心に迫ります。

ゴダール 「 さらば、愛の言葉よ 」

     



     ゴダールの新作にして遺作として予定されている3D映画「さらば、愛の言葉よ」を帰国
    した親友 I と観に行く。 
     遺作となるかどうかはともかく、もう商業用長編映画からは引退するそうで、撮るとして
    もプライベートな短編だけらしい。宮崎 駿と同じスタンスだね。

     前作「ソシアリスム」は私にとって主題論的にこんなにわかりやすいゴダールはない、
    それなのに何でみんな相も変わらずの批評しか書かないのかという思いから書き連ね
    た。より正確には、「わかりやすい」というだけでなくこんなにも当時の私の関心事とシ
    ンクロするゴダールははじめてという思いにつき動かされた。
     そんな具合だから本作も楽勝と思いきやさにあらず(苦笑い)。
     さりとて批評家諸氏のように引用にまつわる「訓詁学」するつもりはなく、主題論から多
    少、説話論にシフトするが正面からいきます。

     原題には「愛」などついておらず、「Adieu au Langage」、直訳すれば「さらば、言葉」
    です。もっとも「Adieu」には「さよなら」という意味の他、スイスのヴォー州では「こんにち
    は」という意味もあることはゴダール自身も認めているところです。
     つまり、これが最後といいつつ次回作も撮るかもね、とファン、批評家に淡い期待を抱
    かせている。
     「言葉」にさよならするということは、新しい映像言語をゴダールは遺作で切り開いた、
    そう期待させる。
     失語症になった写真家・中平卓馬、ラルティーグ、ユジューヌ・アッジェに連なる「新しい
    視線」の映画か?今さらゴダールがそんなことするはずがない。「ソシアリスム」で既に
    捨てカットもカンパケのカットも社会主義のように平等だと表明しているくらいだから。
     新しい言語はともかく本作に描かれたカップ2組はやたら全裸になり小難しいことを語
    りあっている。そんなことより男女が全裸になったのだから肉体言語で話せよ、すなわ
    ち、絡みあってベッドシーンがあってしかるべきなのだが、ほとんどその様子は描かれ
    ない。バスルームで男が求め女が拒む、それくらいだったと記憶している。
     画家・フランシスコ・ベーコンにインスパイヤーされたといわれるベルナルド・ベルトリッ
    チ の「ラストタンゴインパリ」では、ベルトリッチ曰く、マーロン・ブランド、マリア・シュナ
    イダーにとって「言語」は意味がなく、二人は「肉体言語」で語りあい、F・ベーコンの絵画
    のように溶け合う。(もっとも、私は本物の「ラスト~」を観ていないのかもしれない。黒澤
    明によるとヨーロッパで見ると色彩が全然違うそうだから)
     やはり、正面からゴダールに立ち向かうは無理があるのかもしれない。
     それではと、3Dメガネを外し画面を見つめてみた。
     意地悪ゴダール爺さんのことだから3Dはたいして意味がなく3Dメガネ外して観る輪郭
    が2重の画面こそ素晴らしいように計算されているのではないかと思ったわけです。
     それくらいひねくれないとゴダールは観れません。
     でも、ゴダールの「映画史」のような効果的な画面は3Dメガネ外したところで得られな
    かった。
     結局、わかったようなわからないままエンドクレジットとなってしまった。

               決闘写真論
               これほど対称的な二人の写真家の対談
               がよく実現したものだと思う。つまり70年
               代は「他者」と対峙できたのだ。だからこそ
               中平は時代の寵児たりえた。
               今日、「オタク」と「ヤンキー」の対談?と
               言っても無理でしょ。 


     アフターで親友 I と語った際、私の昨年度、旧作第2位はスタンリー・キューブリックの
    処女作「恐怖と欲望」だと告げた。ベタだが、やはり処女作にすべてがある、処女作から
    離れようとしてもなかなか離れられるものではない。
     処女作にすべてがある?
     遺作として予定されている本作にとって、処女作を顧みることはそれなりに意義のある
    ことではないだろうか?
     長編処女作「勝手にしやがれ」でゴダールは何をやったのか?
     即興演出?ジャンピングカット編集?いや~、一番印象的なのは主役二人の魅力もさ
    ることながら何と言ってもラウル・クタールの手持ちカメラによる息をするが如くの映像で
    しょう。この鮮烈さは30歳過ぎて再見した時のほうがはっきりと感じられた。
     きっと、軽く若さを失ったからでしょう。
     本作で素晴らしいのは、愛犬ロクシーと散歩道とおぼしきゴダールの家の近所の
    湖、川、森、その他の自然の映像ではないだろうか?換言すればデジタル映像がフルに
    発揮された場面じゃないか。室内の男女2組のシーンはそれほど面白くない。
     それではとパンフを読み返すと、撮影監督・ファブリス・アラーニョの証言が目に止まっ
    た。これらの撮影の時、ゴダールは現場にいなかったようだ。

      
      「自分があれをやれ、これをやれと言えば、君たちはそうしようとするだろうし、自分
       が感じているままにうまくやれなくなる」と。彼が私たちに自由を与えて、というの
      ではなく、自由を取り上げたくなかったということです。

                             ~ 「さらば、愛の言葉よ」パンフ ~


     手持ちカメラのラウル・クタールと全然、違うようで基本的に同じだね。
     手持ちカメラからキャノンEOS 5DマークⅡに変わってもより徹底しているといえる。
     絵コンテがない手持ちカメラどころかゴダールが現場に立ち会わず指示していない
    のだから。
     本作のデジタル映像はゴダールがカラーコレクションしてるのだから、従来のデジ
    タル映像と変わらないかのようだが、多くの人が指摘するようにハリウッドのデジタル
    映像とは何かが根本的に違うのだ。どこが違うかといえば、色はつけたとしてもゴ
    ダールが「スケッチ」していないからだ。私はデジタル映像とは基本的にアニメだと
    思っている。つまり、「絵」を書いているわけです。(未見だが、「ゼログラヴィディー」
    では俳優の顔だけリアルで他はすべてデジタル処理らしい。つまり、大部分は「絵」
    を書いているわけです。)
     宮台真司が蓮實重彦先生の初期評論(表層批評)の理論的支柱の一つと看破
    した、中平卓馬~「風景論」を、そんな極東の事情など知るよしもない、ゴダール
    も無意識に共有し、その発展形を本作のデジタル映像でやっているとしたら言い
    過ぎだろうか?     
     そんなデジタル映像とゴダールの編集があいまってハリウッドのデジタル映像と
    は根本的に異なる鮮烈な映像が出来あがっているのだと考える。
     新しい「言葉」ではないが、処女作「勝手にしやがれ」の即興演出と手持ちカメラ
    で切り取ってみせた「風景」と同心円状に本作デジタル映像は存在するのだ。

     「さらば、言葉」(Adieu au Langage)について私は誤解していた。
     もっとベタで単純なことだ。
     親友 I と3軒ハシゴして飲んで食って語らって家へ帰ってバタンキューで寝てし
    まい、目が覚めた瞬間に気がついた。 
     即興演出やソニマージュ他、映像的にゴダールはいろいろやっているが、書物
    からのおびただしい引用にみられるように彼ほど「言葉」に捉われた映画監督は
    そうはいまい。何のかんのいってゴダールにとって「言葉」とはそれほど重要なの
    だ。それなのにもう間もなく「言葉」とおさらばしなけらばならないということだ。
     死ぬということは当然、「言葉」を失うことなのだから。

     いやいや、それは違うよ、意地悪ゴダール爺さんがいうかもしれない。
     だから、「Adieu au Langage」の「Adieu」は英訳すると「Long Goodby」のよう
    な決定的な別れという意味と「See You」くらいに軽い別れの意味とダブルミーニ
    ングにしたのですから。
     それなら、商業用長編映画は撮らなくてもいいですから、カンヌ映画祭の元プレ
    ジデント、ジル・ジャコブにあてたビデオレターみたいなものを作って下さいよ。
     昔あった、「寺山修司と谷川俊太郎」のビデオレターみたいなやつを。
     期待してますよ。
    
     撮影監督・ファブリス・アラーニョ曰くのようにゴダールは映画撮らずにはいられな
    い人、「撮る病」に取りつかれた人だから、きっとそうするでしょう。

    

  






      
スポンサーサイト

映画 | コメント:0 |
<<One Year Before (小保方さんは将来ノーベル賞を取る!?) | ホーム | ニュースのリミックス(「千葉市にイスラムタウンを」、ですか?)>>

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

| ホーム |