素晴らしき放浪者の戯言

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夏の戦争映画 VOL.3 「連合艦隊」 「連合艦隊司令長官 山本五十六」 中編

 



  【連合艦隊指令長官 山本五十六(1968年)】

    この映画は「日本の一番長い日」に続いて、8月15日終戦記念日映画の第二弾として
   企画されたというふれこみだ。そうかもしれないが、私にはもう一つの企画意図が隠れて
   いるように思える。
    山本五十六役は三船敏郎が演じている。
    公開時、1968年と言えばもう一本、山本五十六が登場する映画が東映・20世紀FOX
   で放映された。もちろん、「トラ トラ トラ」だ。
    黒澤 明の降板劇が有名だが、彼が山本五十六役に選んだのは長年コンビを組んだ
   三船敏郎ではなかった。黒澤曰く「三船は陸軍だからダメだ」未完だが、「トラ トラ トラ」
   の山本五十六役は高千穂交易社長(当時)、鍵谷武雄氏だった。その他の海軍将校も
   軒並み演技素人の海軍出身者で揃えられ演技指導に当たり難渋した人もいたようだが、
   鍵谷氏に関して「やはり海軍出身者は風格が違う」と黒澤は納得したようだった。
   
    東宝映画「山本五十六」の山本五十六役の三船敏郎を見ると、いつもの三船よりスマ
   ートでジェントルに見える。本作を観て「やっぱり三船はいい」という人も多いようだが、黒
   澤 明にしたら「全くダメ」ということになるだろう。
    肖像、実像に「待った」がかかる人物は何か背景にあったりするもので・・・・・・。
    これについてはひとまず留保するとして黒澤批判の急先鋒、大島 渚も図らずもこう言
   っている。「一軍の将は俳優には出来ない」と。
    この言葉の実践として「御法度」では近藤 勇役には職業俳優ではなく映画監督、崔
   洋一をキャスティングしている。
    東宝映画「山本五十六」には「七人の侍」の侍他、加山雄三、藤田 進等東宝オール
   スターといってもいいくらいの布陣で望んでいる。
    東映の「トラ トラ トラ」に負けてたまるかという気概はあったと思う。

    さて、山本五十六は名将として知られている。
    三国同盟にも日米開戦にも反対で好戦的軍人ではなく部下の人望も厚かったからだと
   思う。米国駐在の経験もあり泥臭い陸軍とは違い、開明的でスマートなイメージは海軍
   そのもののアイコンと言ってもいいかもしない。
    名将、山本五十六は名語録を残している。

    「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、 ほめてやらねば、人は動かじ。」

    男の修行 
    「苦しいこともあるだろう。 云い度いこともあるだろう。 不満なこともあるだろう。 
     腹の立つこともあるだろう。 泣き度いこともあるだろう。  
     これらをじつとこらえてゆくのが男の修行である。」
  
    私の友人など外資系企業勤務でも会社のディーリングルームのデスクに「男の修行」
   を貼っていた。

    山本五十六を巡る映画の成否は「名将 山本五十六」という「神話学」の神殿をいかに
   精緻に築造できるかにかかっている。1968年当時、すでに2度のベネチア映画祭主演
   男優賞(「用心棒」「赤ひげ」)を受賞し東宝の看板スターだった三船敏郎を山本五十六に
   起用し東宝オールスターキャストの布陣で固めればこの“ 神殿 ” の築造は成功したも同
   然だ。8月中旬に観てもう数日経ってしまって失念した部分もあるが、冒頭の船頭とのや
   りとりといい、数名の海軍出身者への取材のみならず「参考資料」として橋本 忍が名を
   連ねているのは伊達ではなくよく練れた映画と記憶している。
    「連合艦隊指令長官 山本五十六」は山本五十六の神話学を見事に体現している。
    これらについて具体的に述べ、三船讃歌を述べれば映画評としては完了だ。
    公開当時、いや20世紀はそれでもよかったかもしれないが、21世紀現在、それでいい
   のだろうか?
  
    映画は元来、「神話作用」を伴うものであって、「神話」たる物語を映画の神話作用でこし
   らえた「神殿」として崇めたてまつることは果たして映画評といえるのか?
    映画の神話作用に解剖学を施して「神話」の解体に従事することこそ本作のような映画
   の批評に資するものではないかと思う。

    肖像、実像に「待った」がかかる人物は背景に何かあるものである。
    例えば、西郷隆盛のように。
    万人が山本五十六≒ 三船敏郎と思っていても、黒澤 明からすれば全然ダメということ
   に呼応するかごとく、神話「山本五十六」と実像「山本五十六」は別物ではないか?

                                   (つづく)
                      







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