素晴らしき放浪者の戯言

100年に1度の世界の大転換、50年に1度の日本の政権交代を見届けるブログです。 政治、経済、メディア、都市、映画etcの各分野を放浪しつつ 時たま核心に迫ります。

夏の戦争映画 VOL.3 「連合艦隊」 「連合艦隊司令長官 山本五十六」 後編

  



  
    この映画を参考にしながら「名将 山本五十六」、「大日本帝国海軍」について再吟味し
   てみよう。遠回りのようで今後、戦争映画を観るうえで新たな視点となり、しいては歴史
   観の新たな展望に資することになると思う。
   
    山本五十六は「それは是非やれと言われれば初め半年や1年の間は随分暴れてご覧
   に入れる。然しながら、2年3年となれば全く確信は持てぬ。」と言ったと伝えられる。
    彼は早期和平を目指して本土空爆された経験のないアメリカに潜水艦からの空爆計画
   を策定し、ややしょぼいが、いくつかの成功を収めてことはVOL.2で述べた通りです。
    前々回の「連合艦隊」では省略どころかふれてもいなかったと記憶するが、「山本五十
   六」では真珠湾攻撃以降のマレー沖海戦等の連合艦隊の快進撃についてもふれられて
   いた。この機会に山本は和平へこぎつけようと考えていたようだが、ドールットル空襲に
   て日本は初めて米軍に本土空爆される。この空襲によってミッドウェー島攻略と米軍機動
   部隊壊滅を目的とするミッドウェー作戦の遂行を迫られる。
    ミッドウェー海戦は魚雷 ⇒ 陸上攻撃用爆弾 ⇒ 魚雷ととり代えているうちに米軍艦載
   機の急降下爆撃にやられる。結果、連合艦隊は空母、赤城、蒼龍、飛龍、加賀を失う。 
    レイテ沖海戦といいミッドウェーといいどうも連合艦隊は上層部の判断ミスによって負
   けているとしか思えない。
    これについては当事者、戦艦武蔵艦長が戦後毎年行っていた「反省会」で結論づけて
   いる。 
    「我が国は情報戦と兵站において米国に敗れたのです」と。

    前々回、「兵器」、「作戦」だけが戦争か?と述べたがもちろん、それだけでは戦争に勝
   てない。情報戦と兵站抜きでは戦争に勝てない。
    戦争映画観ても「兵器」「作戦」にばかり目がいく人が多いことは「情報軽視は日本軍の
   宿痾(しゅくあ)である」を今でも立証するが如くだ。
    そうは言っても情報軽視が国民性に根差した日本軍の体質なら致し方ないともいえる。
    果たしてその程度のことだろうか?
    この言説に真っ向から異を唱える人物がいる。
    「天皇のスパイ」ことアンヘル・アルカッサル・デ・ベラスコだ。
    ベラスコは語っている。

     「日本はアメリカに完勝していた」
     ベラスコは、日本海軍が米英海軍を徹底壊滅して戦勝国になり得た機会が
     少なくても四回はあったと断じていた。広い太平洋海戦の日本の勝利は間
     違いなかったと死ぬまで信じていた。たとえ情報が敵側に完全にキャッチさ
     れていたにせよ、戦術、物資、装備、士気などが米英海軍以上に優れてい
     た初期の日本海軍機動部隊は、普通の参謀が指揮しても開戦初期から一
     挙に敵をつぶせたという。
     なぜなら、TO情報が連合側の情報機関と同質またはそれ以上の軍事情報
     を日本政府に届けていたからだという。

                       ~ 高橋五郎 著 「天皇のスパイ」 ~

    
    TO情報とはベラスコを長とするTO(東)諜報機関の情報のことで、TOは日本政府駐ス
   ペイン特命全権公使、須磨弥吉郎と契約して連合軍側の情報を渡していた。
    「(天皇のスパイ、ヒトラーのスパイ、ムッソリーニのスパイ、さらにイエズス会のスパイ、
   4重スパイの超スパイの俺様が)連合軍の情報を日本軍に渡した」のだから戦術、物資、
    装備、士気が優る日本軍は勝てたはずだというわけだ。

                                        ( )内筆者加筆   

   ベラスコの言う日本軍が勝てたはずだという戦場はどこを指すのか?

     いわくミッドウェー、ガダルカナルが完全勝利の場だった。
     TOは事前に米軍が意図した主戦場と戦闘規模を日本政府に打電した。
     たとえ、その暗号電文が解読(盗聴)されていたとしても、文面の裏を読み取
     れば敵の作戦目的がつかめる情報に整理して日本側に渡したつもりだった。
     一例をソロモン海戦に見てみよう。TOは敵側がガダルカナル島に大攻撃をか
     けようとしている情報を事前に入手して日本に送信したのに、日本軍は無反
     応だった。

                 (中略)

     これはベラスコからの大反撃開始の予告電文だ。
     この電文が日本に入電する三ヶ月前、日本軍はガダルカナル島に上陸占領
     していた。このTO電文がガ島奪回を意図する動きだと見抜いた東京の参謀
     本部の人間は皆無だったのだ。このTO電文はそのまま外務省の館長符合
     扱来電綴りのなかにへ直行した。つまり捨てられた。こんな調子で永遠に
     綴りに仕舞い込まれた電文の数は枚挙のいとまがなかろう。

     もともと、勝つ戦争に臨んでいなかったからだ。まして、外務省や政府内に寄
     生している“ 売国奴 ” らが、日本有利を認めないこともあった。ベラスコの無
     駄骨は続いた。
     TO情報第909号前後の実際の戦況はどうなっていたのかを見てみよう。

     8月13日 「米軍はソロモン諸島の上陸作戦について相当の犠牲を払っても
     作戦を続行する覚悟を決めている」(TO電報)

     8月14日 「ソロモン諸島に上陸した部隊があと1ヶ月戦闘継続の事態にな
     れば米軍は強力な増媛部隊を派遣するだろう」(TO電報)
     
     8月31日 「米軍は太平洋諸島の占領計画を策定―― 米軍海軍は当面戦
     力を太平洋に集中する計画―― そのため太西洋方面が手薄になる恐れか
     ら英国から非難の声あり」(TO電報)

                             ~ 引用 同上 ~


    これら情報(電報)無視した政府と参謀本部によってどうなったかというと、

     8月18日、一木支隊ガ島上陸、3日後に全滅・・・・・。8月31日、川口支隊ガ 
     島上陸、苦戦ののちに壊滅。9月4日、青葉支隊ガ島上陸、攻撃後に壊滅。

                             ~ 引用 同上 ~



     米軍が総攻撃仕掛けてくるか如きの勢いなのに何をビビッているのか、パラパラと散
    発にしか部隊を派兵しなけば勝てるわけがないのである。
     米国太平洋艦隊情報参謀は「ガダルカナルで部隊を小出し投入した日本軍の作戦
    の意味がつかめず最後まで困惑した」と述懐している。
     
     この点を「名将 山本五十六」の神話学の体現たる「連合艦隊司令長官 山本五十
    六」では全く描いていない。
     兵站を米軍に撃破されガダルカナル島に飢餓状態のままの日本兵とこの戦況に鑑
    みガダルカナル作戦の中止を決定する山本五十六の英断が描かれるのみであります。
     
     「天皇のスパイ」では最初からこう結論づけられている。

     
     日本政府と軍部(少なくても山本五十六率いる日本海軍)には、何が何でも
     アメリカに勝つ強い意志など、最初から微塵もなかった事実。


                                   ~ 引用 同上 p24 ~ 

  

          天皇のスパイ

    
    「名将 山本五十六」神話はガラガラと音を立てて崩れていく。
    さらに海軍善玉説も同様だ。
    右派やネトウヨたちにはこれらの言説は到底受け入れられないだろうが、少なくても大
   本営や軍上層部(少なくても海軍)が無能だったからこそ日本は負けたとは言えるだろう。
    右派やネトウヨはなぜそこを追求しない、無視するのだ。
    少し分け入っただけで単に情報軽視という生易しいものではなく、ベラスコ曰くのように
   本当に勝つ気はあったのかと言いたくなる。
    真珠湾直後、日本海軍の潜水艦10隻が一斉にアメリカ西海岸沿岸のサンディエゴや
   モントレー、ユーレカやアストリアなど複数の都市を砲撃するという作戦計画があったが
   「クリスマス前後に砲撃を行い民間人に死者を出した場合、アメリカ国民を過度に刺激
   するので止めるように」と計画中止にしたのはどうしたわけだ。
    そもそも真珠湾攻撃だって、「開戦のきっかけ」を与えてよしとすると考えても第一次
   攻撃だけで波状攻撃しなかったのは怪しい限りだ。
    日本軍パイロットが首をかしげて言ったという。
    「どうして波状攻撃しないんですか?」と。

    ここまで知ってしまうと、どうしても「靖国マンセー!」という訳にはいかない。
    なぜなら戦没者の御魂に尊崇の念を捧げるのと同時に無能というより裏切り者かも
   しれない軍上層部の責任をうやむやにして再び「国家神道」を強化することになるから
   です。

    ベラスコを引き合いに出すまでもなく天才軍略家・石原莞爾も言っている。

    「太平洋戦争は指導者が無能だったからで、私が総参謀長だったらアメリカに
     負けていなかった」と 

    実際、「太平洋戦争 War Game」を石原の策定した作戦でやると日米双方のプレイヤー
   が入れ替わってもどうしても日本側プレイヤーが勝ってしまうのだそうだ。
    「情報戦」において敗れただけでなく「作戦」もまずかったということになる。
   
    でも、世の中、「正負の法則」であってまだ先があるのだが、それは別の機会にしよう。
    考えようによっては、山本五十六は名将とはいえなくても「賢人」ではあったかもしれな
   いのだ。すべて知りつくしているはずのベラスコは来日した際、山本五十六の墓参りを
   している。
   
    それに海中をマッハ(音速)で進む魚雷が開発されている時代だ。
    過去の戦争にこだわり続けてもしょうがないのかもしれない。

    最後につけ加えると、山本五十六の最期は緩慢なる自殺行為だと考える。
    米軍の情報収集能力について知悉していたであろう山本がわざわざ飛行機で陣中
   見舞いするだろうか?飛行機はおとりで陸路ジープで進むとか考えないだろうか?
    彼の最期は「どうぞ私を撃って下さい」と言っているようなものだ。
    
    それが山本五十六の贖罪だったのだろう。

                              (VOL.3 了 VOL.4につづく)




   



 
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