素晴らしき放浪者の戯言

100年に1度の世界の大転換、50年に1度の日本の政権交代を見届けるブログです。 政治、経済、メディア、都市、映画etcの各分野を放浪しつつ 時たま核心に迫ります。

UCLA映画テレビアーカイブ 後編

   



    【わが心のジミー・ディーン】 ロバート・アルトマン監督 ~ 日本劇場未公開~

     いなたいアメ車は、我々を50年代アメリカ、映画「ジャイアンツ」の舞台、テキサスに連
    れていく。この映画はテキサスの片田舎で結成されたジェームス・ディーンファンクラブ
    の女性が再会するストーリーだ。
     当時、高校生だった彼女たちの溜まり場の雑貨店だけで物語は進行していく。
     原作が舞台なので、当然、そうなるかのようだが、それは舞台の映画化を口実とした
    監督・アルトマンの映画的欲望に他ならないだろう。
     昨今もワンシチュエーションドラマは、結構、作られているが古くはヒッチコックも「救命
    艇」で試みていることであり、才人・アルトマンもチャレンジしてみたかったのではない
    か?
     同窓会映画は、みんなで旧交温めるだけでは映画にならないのだ。
     必ず異化された「他人」が紛れこまないといけない。
     例えば、ケネス・ブラウナー監督「ピーターズ・フレンズ」がこれにあたり、オックスフォー
    ド・ケンブリッジ卒のエリートの同窓生に交じって、その連れ合いである非エリートが波風
    立てるように。この映画も同様で性転換した彼女(元男性)がさざ波だった同級生の軋轢
    を大時化(おおしけ)の海へと変える。このおネェによって何十年来の真実、すなわち、
    ジェームス・ディーンの子供を宿したと言う同級生のウソが明らかになる。
     今秋、大学の同窓会に行ってきたが、語りあっているうちに30数年来の真実の開示が
    ありました。男も女も自分に都合のいいこといってますな~(苦笑い)。
     
     1度は観たいが(後味悪いことこのうえないことから)もう1度は観たくない、傑作「3人
    の女」ほどではないが、アルトマンの演出、カメラワークは冴えている。
     でも、作劇の建てつけは「ピーターズ・フレンズ」の方が凝っている。エリートの連れ合
    いの非エリートよりさらに異化された人物がこの同窓会の主催者ピーターであると終盤、
    明らかになるからだ。イギリスのエリートらしく、劇中、彼はバイセクシャルであることを
    公言して憚らないが、実は自分はHIVポジティブであるから皆を集めたんだと告白する。
     あんこは砂糖だけでなく塩を入れた方が甘くなる。旧交温めるお膳立てでもさざ波が立
    ち排斥力が働くがピーターの一言でこの排斥力はぐるんとひっくり返り吸着力として作用
    し、やっぱり同級生っていいよねで終わる。そう書きつつ、いや、待てよ、ベクトルこそ真
    逆であるが、アルトマンも負けていない。いがみ合うが何のかんのいってジェームス・
    ディーンファンクラブの溜まり場だったこの雑貨店があってのことだ。この再会から何年
    後の今や蜘蛛の巣だらけの廃墟となった雑貨店がラストに映し出される。
     みんなが陽気に笑っているハリウッドで一人冷笑しているアルトマンの面目躍如です。

     トランプはこのさびれた街も立て直せるかのか?


    行列
             私の観た4本はすべて長蛇の行列だった。


     
    【ザ・コネクション】 シャーリー・クラーク監督  ~日本劇場未公開~

     これもワンシュチュエーション映画だ。ジャンキーとかろくでなしの溜まり場のNYのア
    パートで繰り広げられる群像劇。このろくでなしのドキュメンタリーを撮る撮影クルーをさ
    らに撮影するドキュメンタリーもどきの映画。
     それにしてもこのやらせドキュメンタリー調のあざとさはどうしたことだ。
     やはり欧米ではロバート・フラハティーのドキュメンタリー論が幅を利かせているのかと
    思っていたら、やっぱりだ、監督らしい人物が「俺はロバート・フラハティーとエイゼンシュ
    タインに影響されている」と語る。
     (ロバート・フラハティーとはドキュメンタリーも演出があっていいと言う人です。演出と
      やらせの境界は曖昧だが。)

     まあ~、それにしてもNY、ジャンキー、ジャズ、即興、ドキュメンタリーと要素を集めて
    「さあ~、どうだ」と言わんばかりのあざとさと悪い意味での紋切り型はどうしてくれよう。
     確か「人間蒸発」に対してだったと記憶しているが、かつて大島 渚が今村 昌平を
    揶揄して「10年遅れたドキュメンタリー」と言ったことがある。
     ドキュメンタリーも進化しているのだ。多くのジャンル映画が滅びたとしてもドキュメン
    タリーは進化してしぶとく生き残ると思う。
     いまだ未見だが21世紀のドキュメンタリー作家、松江 哲明監督作が急に観たくなっ
    た。

     この映画は「アーカイブ」されるだけの映画で完全に過去のものだと思う。

     トランプはジャンキーや麻薬売人らを徹底的に取り締まるようだからこういう群像劇は
    観られなくなるかもしれない。



    【ミッキーワン】  アーサー・ペン監督  ~日本劇場未公開~  

     パンフには「古典的な話法を否定して撮った実験作」となっている。
     確かに今日、「描写」については進化したかもしれないが、「話法」についてはとんと無
    頓着になっている。そういう今日的視座に立てば「実験作」ということになるのかもしれな
    いが、これはフェリーニに影響受けた作品だ。冒頭のワンカツト観ただけですぐわかっ
    た。
     「8 1/2」(1963年)は本作公開の2年前、この映画が当時どれほど映画界に影響
    を及ぼしたか本作を観るとよくわかる。


    ミッキーワン
                  これがファーストカットです。


     黒澤組の常連、藤原鎌足が前衛芸術家役で出演している。
     ハードボイルドには必ずといっていいほどチャイナタウン、中国人が出てくる。
     こなれているのではなくすんなり消化しきれなさを残すハードボイルドなのだから西欧
    人から観たら東洋の不可解な存在としての中国人がお似合いなのか。
     この芸術家は屋外で巨大な機械仕掛けのアート作品を展示するのだが、 不具合で
    出火して消防車が駆け付けあたり一面が泡だらけとなる。屋外のオープンセットを使っ
    て展開される本編とは一見、何の関係もない逸脱。こういうシナリオ構成はフェリーニだ
    ろう。
     ハードボイルドには不可解な中国人なら、フェリーニ的幻想にはいつもニコニコしてい
    る妖精のような日本人がお似合いというわけか。

     「8 1/2」は新作がなかなか撮れない、煮詰まった映画監督グイドのストーリーだ。
     彼は新作撮らなければいけないという強迫観念に実はかられている。フェリーニが撮
    ると一見、そうは観えないが。強迫観念に捉われているからこそ様々の幻想が湧きあ
    がる。
     表象的類似点だけでなく実はこの映画の主人公のスタンダップコメディアン(ウォーレ
    ン・ビイティー)も強迫観念に捉われている。腕はあるが興業主ともめてしまったことから
    “ 逃亡者 ” となり名前を変え職を変えて身を隠していたが、昔とって杵柄でコメディアン
    を再開するとすぐ頭角を現し、メジャーどころからスカウトがくる。自分は狙われている、
    殺されるという強迫観念に捉われているが故に何とか口実を作ってオーディションから
    逃げようとするのだが・・・・。
     逃げまどう人という主題論的系統は「俺たちには明日はない」に受け継がれる。
     とうとうオーデイションの舞台に上がるはめになったコメディアンはスポットライト浴びせ
    られながら狼狽する。カーテンで仕切られた舞台2階の奥から彼を品定めする人物は誰
    なのか?
     これは最後まではっきしない。どこからともなく雨あられのように銃弾が飛んできて壮
    絶な最期をとげる「俺たちには明日はない」のボニー。ここでも銃弾あびせた人物ははっ
    きりとしない。

     アートぽさとエンタメがマリアージュした映画で現代でいうとコーエン兄弟がものすタイ
    プの映画かもしれない。音楽はスタン・ゲッツがフィチャーされいる。本作を私は十分堪
    能したが、「8 1/2」(63年)といい、「ゲッツ/ジルベルト」(64年)といい、当時一
    世風靡したものを小器用に取り入れちゃうあたりにアーサー・ペンのその後が見てとれ
    るとも言える。

     現代にリメイクしてもいいかとも一瞬、思ったが「監視」が当たり前の現代ではアカン
    か。
  
     トランプさん、「America Great Again」なら「監視」も止めてもらえませんか?

                                              (了)




 
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