素晴らしき放浪者の戯言

100年に1度の世界の大転換、50年に1度の日本の政権交代を見届けるブログです。 政治、経済、メディア、都市、映画etcの各分野を放浪しつつ 時たま核心に迫ります。

神代辰巳から望月六郎へ VOL.2

 


 
 〔アフリカの光〕 
 
   本作は、「青春の蹉跌」(74年)の好評に東宝が気をよくしたか、神代から
   手枷、足枷を外したように思える。丸山健二を原作としているが、神代節全開である。

   ストーリーはたわいもなく、アフリカ行きの漁船に乗ることを夢見て北海道の漁村に辿り
  ついた順(ショーケン)と勝弘(田中邦衛)のホモっぽい友情と別れ、漁村のあらくれ男と、
  彼らの相手をする酒場の女との交流を描いている。
   確か高校生の時、TVで観たので今回が2度であります。  
   当時は「スケアクロウ」みたいな話だなと思いながらも、どうも順と勝弘がよくわからな
  い映画でした。でも、ラストでショーケンが「もう1円玉はいらないだろう」というセリフ
  に何だかわからないながらも妙に感動させられた。これは相米慎二の「翔んだカップル」で
  リングサイドに向かう鶴見辰吾にトレーナーから発せられるセリフ、「ウォーミングアップ
  はもういい」に通じる。
   それにしても何でこいつら、こんなにロクでもないんだ、と当時は思ったものですが、今
  観れば、「傷天」の小暮修が綾部探偵事務所クビになって北海道に流れついたと思えば何
  の違和感もなくヒタリとはまる。相棒、乾 亨(いぬい あきら)が勝弘に変わっただけだ。
  「青春の蹉跌」から連なる時代の空気もわからないし、挫折もわからない、要するにガキ
  だったからわからなかっただけであります。

   インサートされるアフリカの風景やアフリカ行きの船とは、「真夜中のカーボーイ」の
  フロリダみたいなもので、希望、夢、野心、未来etcでありましょう。ダスティン・ホフマ
  ンが失禁するように、田中邦衛もおもらしする。カッコ悪いがストレートに胸に突き刺さ
  る時代だった。

              アフリカの光


   この時代はまだ「さすらい」が世界中にあふれていただろう。
   ピッピーはもはや退潮気味でも、ヴィム・ベンダース「さすらい」(76年)が撮られて
  いる。セルジュ・ゲンズブールが「ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ」(76年)をもの
  している。あれは「さすらい」の映画ではないが、根なし草でプレイボーイのゲンズブール
  が遍歴・放浪の果て、一休みしている映画に思える。「ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ」
  と神代の世界は通じると私は思っています。

   「ロスジェネ世代」がこの映画を観たら、何と言うだろうか?
   随分と甘っちょろい世界だと思うに違いない。何のかんの言ってもあの頃は呑気なもの
  だったと思う。今日の「ロスジェネ世代」は満員電車に詰め込まれ身動きできないうえに、
  「効率」、「効用」、「結果」を求められ、「基準」に縛られ、背中に冷たい汗がタラリと
  一筋流れるのを感じている。彼らには辛いこと言ったような気がするが、可哀そうな世代だと
  つくづく思う。何たって「さすらう」ことすら許されないのだから。
   「さすらう」とすれば、ネット上だけかもしれない。

  
   さて、本論に戻ると、本作では神代節炸裂でありまして、ホモっぽいショーケンと田中
  邦衛がだらしなくもつれ合い、殴り合い、おんぶにだっこするし、酒場の女(桃井かおり)
  とのカラミもホモセクシュアルな二人に女の出番はないというばかりにそっけない。
   くねくね軟体動物のような神代映画の登場人物を二人は体現しているのだが、それは
  日本人が大好きな「ふれない」であり、「寅さん」とは別種の「日本人のやさしさ」の発露
  であります。今よりも人と人の連帯が濃厚だった時代を映している。
   でも裏を返せば、個の確立した西欧のような厳しさがない。
   当ブログの由来、ルノワールの「素晴らしき放浪者」で放浪者を演じるミッシェル・シモン
  はそもそも「ふれない」など求めておらず、壊れたオートマタ(自動人形)のように無茶苦茶
  しでかす。オートマタなので軟体動物と違って湿っておらず、乾いているのです。
   軟体動物の饗宴たる「アフリカの光」がどうしようもなく時代をしょっているとしたら、
  壊れたオートマタのでたらめな身振りは時代と国境を超えているといったらいい過ぎか。

                                   (つづく)
  








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