素晴らしき放浪者の戯言

100年に1度の世界の大転換、50年に1度の日本の政権交代を見届けるブログです。 政治、経済、メディア、都市、映画etcの各分野を放浪しつつ 時たま核心に迫ります。

作られた 「 伝説 」 、R・キャパの場合 前編

   



   久しぶりにおもしろいTVドキュメンタリーを観た。
   NHKスペシャル「沢木耕太郎 推理ドキュメント運命の一枚 ~" 戦場 " 写真 最大の謎
  に挑む~」という番組で沢木耕太郎氏がレポーターのみならず番組構成に大きく関わって
  いる。
   有名な、いや有名過ぎるロバート・キャパの「崩れ落ちる兵士」に疑念を抱く沢木氏が舞台
  となるスペインに実際に赴き取材している。

   戦場写真「崩れ落ちる兵士」は有名過ぎるにもかかわらず、オリジナルネガが存在し
  ない。
   この写真についての疑義はかねてよりささやかれていたが、近年、前後する43枚が発見
  されたという。この43枚をまさしく松本清張の「点と線」のごとく仔細に分析することによって
  驚くべき事実が浮かび上がってくる。
   それにしてもCGを駆使して43枚の背景となる山の稜線から撮影ポイントを割り出していく
  手法はお見事であってルポルタージュ、ノンフィクションも21世紀、この領域まで踏み込ん
  だかという感慨に包まれました。
   大きく言って、分析、判定されるべき事項は2つあって、その第一は「崩れ落ちる兵士」は
  本当に戦闘時のものか、この兵士は巷間喧伝されるように敵の銃弾で死んだのかという
  ことであります。
   戦闘が行われたとおぼしき場所はスペインのエスペホの丘で撮影時、1936年9月23日
  以前にはこの地で戦闘はなかった。 
   さらに「崩れ落ちる兵士」の白い服の兵士他、43枚の写真の兵士(民兵)が扱ったライフ
  ル銃はどれもすぐ発射できる状態にはなっていなかったことがスペイン人の銃の専門家の
  証言によって明らかにされる。
   つまり、これらの写真は戦闘時のものではなく演習時のものであり、白い兵士は
  死んでいないということになる。

   斯界の人々にとってはこれだけでもかなりの衝撃だろう。
   
   その昔、大学生の頃、先輩から「崩れ落ちる兵士」を撮影しているR・キャパを撮影した
  写真があったら彼への評価は変わっただろうと聞かされた。
   曰く、写真撮っているヒマがあったら駆け寄ってこの兵士を助けろよ!ということだった
  が、この論議は是非を問うまでもなく、その前提、根底からそれこそ「崩れ落ちた」ので
  あります。


   沢木氏は43枚の写真を凝視し続け、この写真の前後とおぼしき写真に注目する。
   その写真は銃をとってエスペホの丘を前進する民兵たちの写真で手前の民兵に隠されて
  白い服の兵士の背中あたりが写り込んでいた。
   10数人に民兵たちの中で白い服を着ていたのは「崩れ落ちる兵士」ただ一人です。
   背景の山の稜線をCGで比較すると直前の写真と「崩れ落ちる兵士」とは微妙に撮影
  ポイントがズレている。足をすべらした白い兵士は腰をかがめ「崩れ落ちる」(すなわち
  すっ転ぶ)直前で2つの写真は連続したアクションであることがCGによって明確に説明
  される。直前の写真には左上隅にもう一丁のライフルの先っぽが写っている。
   つまり、「崩れ落ちる兵士」を置き去りにして手前の民兵とライフルの先っぽの民兵が
  カメラの前を通り過ぎることになる。CGを駆使して直前の写真と「崩れ落ちる兵士」の
  撮影ポイントは1.2m離れていることが明らかにされる。手前の民兵と先っぽの民兵が
  画面を横切り「崩れ落ちる兵士」だけになるには0.86秒だと試算される。
   0.86秒で1.2m撮影ポイントを移動して、こんな絶妙のタイミング「崩れ落ちる
  兵士」を撮影することは困難だと推察される。
   いや、キャパが超人的、アスリート並みの運動神経と反射神経に持ち主なら可能かもし
  れない?!
   エスペホの丘にはキャパの他にもう一人撮影者が居た。
   もう一人とはキャパの恋人、ゲルダ・タローであるが、二人は別種のカメラを使って
  いたことが決め手となった。キャパとゲルダのカメラでは画面比率が違うのです。
   キャパはライカ(2:3)、ゲルダはローライフレックス(1:1)。
   「崩れ落ちる兵士」をそれぞれの画面比率を合わせるとキャパのライカでは上端が5%
  ずれてしまうが、ゲルダのローライならピタリ。
  
   沢木氏は「崩れ落ちる兵士」がキャパではなくゲルダによって撮影されたと結論
  づける。


                              (つづく)






 
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